患者情報・利用者情報の提供同意書

健康に関わる情報を外部とやり取りするときは、規約への包括的な同意では足りません。誰に、何を、何のために渡し、やめるにはどうするかを書いた同意書を用意します。

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「伝えてほしくない情報だけ書いてください」という同意の取り方は、何をやり取りするのかが分からず、有効な同意といえるかが問題になります。

このページの要点

  • 提供先・項目・目的・受け渡しの方法・撤回の方法・提供先の義務を一つずつ書く。
  • 医療機関への照会や国外への移転のように想像しにくい事項は、項目ごとにチェック欄を分ける。
  • 第三者提供・共同利用・委託のどれで組むかを決め、ポリシー・同意書・契約で構成をそろえる。
  • 施設や事業者を介して情報を受け取るときは、誰が本人の同意を取るかを契約で決める。

結論:包括的な同意ではなく、「誰に・何を・何のために・やめるには」を書く

健康相談の事業者が受け取った相談内容をクリニックに渡す、医療コーディネートの事業者が患者の症状を医療機関に伝える、発達支援の事業者が園や学校と子どもの情報をやり取りする――医療・介護・ヘルスケアの事業では、本人の健康に関わる情報を外部と受け渡す場面が日常的にあります。こうした情報の多くは要配慮個人情報で、第三者に提供するには原則として本人の同意が必要で、オプトアウトの方法も使えません(個人情報保護法27条1項・2項ただし書)。

この種の書類で問題になりやすいのは、規約やプライバシーポリシーへの包括的な同意で済ませてしまい、提供先・提供する情報・目的が特定されていないこと、同意をやめる(撤回する)手続がないこと、情報を渡す手段が決まっていないこと、の三つでした。同意書は、次の項目を一つずつ埋める形で作ります。

情報の提供・連携の同意書に書く項目

  • 提供先(名称、又は本人が提供先を特定できる範囲)
  • 提供する情報の項目(基本属性、相談の記録、症状・既往歴・服薬、画像など)
  • 提供の目的と、目的外に使わないこと(広告・研究・マーケティングに使わないなど)
  • 受け渡しの方法(指定したシステムに限る、メールや個人のチャットを使わないなど)
  • 同意しなくても本来のサービスの利用に不利益がないこと
  • 撤回の方法と効果(将来に向かって提供を止める、提供済みの分の扱い)
  • 提供先が守ること(再提供の禁止、委託するときの監督、漏えい時の通知)
  • 本人が未成年・判断能力が十分でない場合に、誰の同意を得るか

健康相談の内容を医療機関に渡す同意書

オンラインの健康相談を提供する事業者(医療機関ではない株式会社)が、相談の結果として医療法人のクリニックの受診を案内し、相談の内容を共有する案件では、事務所が作成した書類一式の中に「患者情報共有に関する同意書」を置きました。提供する項目は、氏名などの基本属性、相談の記録と相談員の記録、症状・既往歴・服薬などの健康情報、利用者が提出した画像、生活の記録、受診の準備のために事業者が作る問診票や症状の整理シートです。目的は、診療の実施、受付やカルテ入力などの診療前後の業務、医療安全とフォローアップ、法令に基づく報告に限り、広告・販売促進・研究・マーケティングといった診療の目的以外に使うことを明示的に禁じました。

同意の任意性として、同意しなくても相談サービスの利用に不利益はない一方、医療機関の診療の質に影響し得ることを確認する条項を置きました。撤回は書面又は電磁的記録で事業者に申し出る方法とし、将来に向かってのみ効力を持ち、撤回後は提供を止め、提供済みの情報も保存義務がある場合を除いて利用を止めて削除すると定めています。医療機関の側の義務(再提供の禁止、委託する場合の監督と事業者への通知、違反したときの賠償)も同意書の中に書き、本人がどこに何を求めればよいか分かるようにしました。

あわせて作成した医療法人との契約では、情報の授受を指定のシステムに限り、「電子メール、個人チャット等の不適切な手段による授受を行ってはならない」と定め、漏えいが起きたら原則として24時間以内に相手方に通知し、契約が終わったら削除の証明書を交付する形にしました。同意書で本人に約束したことを、事業者どうしの契約で裏打ちする構造です。

1通にまとめるか、項目ごとに分けるか

外国人の患者の医療アクセスを支援する事業者の案件では、時期の違う二つの同意書面を作っています。最初に作った利用・個人情報等の取扱いの同意書は、サービスの性質、緊急時の扱い、要配慮個人情報と第三者提供、国外への移転、AIの利用、診療費の収納代行、免責を1通にまとめ、署名は末尾の1か所でした。その後に作った医療ツーリズムの患者申込書兼同意書では、同意する事項を次の12に分け、それぞれにチェック欄を設けています。

  1. 約款などの承諾
  2. 個人情報の取得・利用
  3. 医療情報の第三者提供(提供先を列挙)
  4. 国外への移転
  5. 受診歴のある医療機関への照会と情報の取得
  6. 翻訳
  7. 通話の録音
  8. 法定代理人の同意
  9. 料金
  10. 送金の手数料
  11. サービスが医療行為でないこと
  12. 保険への加入

まとめて1か所に署名する形は手続が軽い反面、どの事項に同意したのかが後から争われやすくなります。特に、医療機関への照会のように本人が想像しにくい情報の流れや、国外への移転は、項目を分けて示した方が、本人が理解したうえで同意したことを説明しやすくなります。

同じ事業者の患者向けの規約では、予約が確定する前の段階でも、医療機関に受け入れの可否を確かめるため、年齢・性別・症状の概要その他必要最小限の情報を医療機関に提供する場合があることを書きました。予約の調整のために情報を出す段階と、予約の確定後に診療のために詳しい情報を出す段階とで、提供する情報の範囲が違うことを、規約と同意書の両方で示しておくと、本人が「まだ予約もしていないのに、どこまで伝わっているのか」と不安を抱くことを避けられます。

第三者提供・共同利用・委託:どの構成で組むか

事業者と医療機関が情報をやり取りする構成には、第三者提供(本人の同意を得て渡す)、共同利用(あらかじめ共同して利用する者の範囲・項目・目的・管理責任者などを本人に通知し又は容易に知り得る状態に置いて、特定の者と共同で使う。27条5項3号)、委託(自分の目的のために取扱いを任せる。同項1号)の三つがあります。どれを選ぶかで、プライバシーポリシーの書き方も、相手方に課す義務も変わります。

情報のやり取りの構成の違い

観点

第三者提供

共同利用

本人への手当て

提供ごと、又は提供先・目的を特定した同意

共同利用する旨、項目、利用者の範囲、目的、管理責任者の名称・住所・代表者を事前に通知又は公表

相手方の利用目的

提供先が自分の目的で使う。目的は同意の範囲に限る

共同利用者が共通の目的の範囲で使う

要配慮個人情報

本人の同意が必要(オプトアウト不可)

共同利用の要件を満たせば第三者に当たらないが、項目・目的の特定が重要

向いている場面

相談の内容を受診先の医療機関に渡すなど、提供先が独立して診療に使う場合

グループ内の施設や、一体として運営する事業者の間

医療機関がその情報を自らの診療に使うなら、第三者提供として同意を得る構成の方が、本人にとって分かりやすいことが多いと考えられます。

どの構成を選んでも、プライバシーポリシー・同意書・事業者間の契約の三つで同じ構成をとることが大切です。書類ごとに構成が違うと、どの手当てが有効なのかが分からなくなります。

見落とされやすいのが、外部のツールやAIへの入力です。発達支援の伴走サービスでは、相談の録画を原則とし、生成AIで文字起こしをする運用について、AIの学習に使われない契約・設定で利用すること、それ以外のAIには個人を識別できる情報、要配慮個人情報、相談の内容(氏名を削ったものを含む)を入力しないことをプライバシーポリシーに書きました。録画を望まない利用者は予約時や開始時に断ることができ、料金は変わりません。保存期間は記録の種類ごとに分け、提出された動画と録画は1か月、解説の動画は6か月、その他の記録は最後の利用日から6か月としています。外部のツールへの入力は、委託なのか第三者提供なのか、外国にある第三者への提供に当たるかを、ツールごとに整理して書きます。

園・学校・医療機関との連携:同意フォームの作り方の変遷

子どもの発達支援のオンライン伴走サービスの案件では、保護者の希望で園・学校・医療機関と情報をやり取りするときの同意フォームを、何度も作り直しました。最初の見本は、保護者が連携先・方法・目的・伝える情報・受け取る情報を21問のチェックボックスで選ぶ方式でした。次の版では設問に管理番号を付け、事業者が「連携計画」の番号と版を記入し、口頭の確認だけで連携を始めないことを明記しました。

最終的な形では、管理番号をやめてやさしい文に書き直しています。事業者が事前に保護者と相談した内容を「今回の連携の内容」(連携先、目的、方法、やり取りする情報、実施予定)として記入して送り、保護者は「この内容でよい」「直してほしい」「しないでほしい」から選ぶだけにしました。「やり取りしてほしくない情報」を書く欄も設け、直してほしい・しないでほしいを選ぶとその場で送信されて同意欄に進まない作りです。16歳以上の子には本人用の画面を用意しました。回答は最後に連携した日から3年間保存します。

ご相談と回答 情報連携の同意の取り方

「伝えてはいけない情報だけを書いてもらい、それ以外は何でもやり取りしてよい」という同意の形にできませんか。

おすすめできません。何をやり取りするかが分からないままの同意では、有効な同意といえるかが問題になりやすいためです。やり取りする内容を事業者の側で具体的に示し、そのうえで保護者に選んでもらう形にしました。

同意のチェック欄があれば、「送信をもって同意したものとみなす」という文言も入れておくべきですか。

不要で、むしろ削除した方がよいと回答しました。チェック欄の上に、親権者として要配慮個人情報の取得、外国の事業者への提供、電子メールでの通知の受領に同意する文を置いています。

規約の側では、連携は利用者の希望と個別の同意に加えて相手方の了解がある場合に限ること、事業者は「利用者の代理人として施設又は医療機関と交渉し、又は要求をするものではない」ことを定めました。これと対照的に、ことばと読み書きのオンライン相談の案件では、学校・園・放課後等デイサービス・医療機関とは直接連絡せず、保護者を通じて情報を共有する設計にしています。申込書を簡素にする際も、要配慮個人情報の同意は申込書に残しました。情報は問診だけでなく、LINEでのやり取りや相談中の会話、写真からも入ってくるため、申込みの時点の同意が全ての場面の「あらかじめの同意」になるからです。問診のフォームには、同意を取り直すのではなく、申込み時に同意済みであることを確認する文を置きました。

事業譲渡・施設・マッチングでは、誰が同意を取るか

同意を取る主体がずれやすいのが、事業者が別の事業者を介して利用者の情報を受け取る場面です。

  • デイサービスの事業譲渡のレビューでは、依頼者のAIの草案が、譲渡人に「譲受人が必要又は有益と認める全ての情報」を渡す義務を負わせていました。修正案では「法令上提供可能な範囲及び利用者その他関係者の同意取得その他必要な手続が完了した範囲において、運営に通常必要な情報」に限定しました(介護の事業譲渡)。
  • 介護施設や保育園が入所者・園児の服薬情報を服薬支援のシステムに登録する案件では、当初の受託者(委託先)としての条項を削除し、施設が利用対象者から「当社による取得、利用及び保管」について同意を取る構成に改めました。
  • ケアマネジャーとデイサービスなどをつなぐマッチングの規約では、まず個人を直接特定できない情報を登録事業所に通知し、受け入れに関心を示した事業所にだけ個人を特定できる情報を渡す段階的な設計にしました。依頼者(ケアマネジャー等)が、複数の事業所に共有され得ることを含めて本人・家族から同意を取ります。
場面ごとの同意の取り手と書面(事務所の書類の整理)
場面誰が同意を取るかどの書面で
相談の内容を受診先のクリニックに渡す相談サービスの事業者が本人から個別の同意書(撤回の方法と提供先の義務を含む)
園・学校・医療機関との情報連携事業者が保護者から(16歳以上は本人からも)連携の都度の同意フォーム
施設が入所者の服薬情報をシステムに登録施設が入所者から、事業者による取得・利用について施設の書式(規約で施設の義務として定める)
ケアマネジャーが利用者の情報をマッチングに入力ケアマネジャー等が本人・家族から、複数事業所への共有を含めて依頼者側の書式(規約で依頼者の義務として定める)
デイサービスの事業譲渡での引継ぎ譲渡人と譲受人が協力して利用者・家族から譲受人との新たな利用契約の手続の中で

本人が子どもの場合は、誰の同意で足りるかも決めておきます。発達支援の伴走サービスでは、成年は18歳(民法4条)であることを踏まえ、18歳以上の子については保護者が代わりに同意することはできず、本人の同意を取ることにしました。本人に理解の程度に応じて説明したうえで、同意フォームへの回答のほか、セッションの冒頭での口頭の確認(日時と内容を記録する)でもよいとし、本人が内容を理解することが難しく成年後見人などの法定代理人がいるときは、その法定代理人の同意によります。16歳・17歳の子も、保護者の同意に加えて本人の同意を取る設計です。成年の本人の同意が得られるまでは要配慮個人情報を取得せず、利用中に18歳になった場合は同意を取り直し、同意が得られなければ契約を終えて按分で返金します。

第三者提供には記録の義務も伴います。個人データを第三者に提供したときは、提供の年月日や提供先の名称などの記録を作成して保存しなければならず(個人情報保護法29条)、第三者から提供を受けるときは、提供者の名称・住所・代表者の氏名と、その者が取得した経緯を確認し、記録しなければなりません(30条)。本人の同意に基づく提供はこの記録の対象です。発達支援の案件で連携の同意フォームの回答を一定期間保存することにしたのは、同意の証拠であると同時に、この記録の役割も果たすためです。情報を受け取る医療機関や事業者の側も、受領時の確認と記録を運用に組み込んでおきます。

撤回への備えも具体的に書きます。同意を撤回されても、それまでに適法に提供した分が遡って違法になるわけではありませんが、撤回後も提供を続ければ同意のない提供になります。健康相談の同意書では、撤回後の提供の停止と、提供済みの情報の利用の中止・削除(保存義務がある場合を除く)を定め、撤回によって受診先での診療にどのような影響があり得るかを説明する条項も置きました。医療機関に対する開示の請求は、その医療機関の手続によることも書いています。誰に何を求めればよいかを本人が迷わないようにするためです。

他院からの照会・海外のカルテ・講習のモデル

歯科医院が患者から取る誓約書では、転院先の医療機関から照会があったときに、医院が相当と判断した場合に必要最小限の範囲で情報を提供することについて、事前の同意を取る条項を置きました(歯科の契約書)。照会への対応を本人に事前に知らせておく形です。

海外で美容手術を受けた人の帰国後のケアを国内のクリニックが受ける提携では、仲介する事業者が、本人の希望があれば海外のカルテを日本語に翻訳して共有する業務が定められます。事業者どうしの契約の守秘条項は、通常「技術上又は営業上その他業務上の情報」を対象にしており、患者の診療情報を誰が本人から預かり、何の目的で、いつまで保管するかまでは規律しきれません。こうした提携では、営業秘密の守秘とは別に、患者本人の同意の取り方と情報の扱いを独立の条で定めておくと、受け取ったカルテを診療に使う医療機関の側も安心して扱えます(外国人患者・医療ツーリズム)。

医師・看護師向けのレーザー講習の受講契約では、受講者がモデルを紹介する場合、受講者が事前にモデル本人から第三者提供の同意(27条1項)と要配慮個人情報の取得の同意(20条2項)を書面などで取ること、実技演習で他の受講者や施術者にモデルの健康情報を開示することへの事前の同意を取ること、講習後の症例相談では患者を識別できる情報を外して提供することを定めました。

ヒヤリングで確かめること 同意書を作る前に

  1. 情報は、誰から誰へ、どの順番で流れますか。

    本人→事業者→医療機関なのか、施設→事業者なのかで、同意を取る主体と書面が変わります。

  2. 提供先の医療機関や施設は、名前を挙げられますか。

    総称しか書けない場合は、提供の都度、提供先を示して同意を取る運用を検討します。

  3. 受け渡しには何を使いますか。

    指定のシステム以外を使わないことを、同意書と事業者間の契約の両方で決めます。

  4. 子どもや判断能力が十分でない人が利用しますか。

    年齢や後見の有無で、誰の同意を取るか、本人の同意も取るかを決めます(訪問看護・自費サービスの契約書)。

起きがちなこと

よくあるご質問

相談の内容や問診をクリニックに渡すとき、同意書には何を書けばよいですか?

提供先、提供する情報の項目、目的と目的外に使わないこと、受け渡しの方法、同意しなくても不利益がないこと、撤回の方法と効果、提供先が守ることを書きます。撤回は将来に向かって提供を止める形にし、提供済みの分の扱いも決めておきます。

同意書は1枚にまとめて署名してもらえば足りますか?

法律上1枚であること自体が問題なのではありませんが、何に同意したのかが後から争われやすくなります。医療機関への照会や国外への移転のように本人が想像しにくい事項は、項目ごとにチェック欄を設けるなどして分けた方が説明しやすくなります。

共同利用と第三者提供は、どちらで組むべきですか?

提供先の医療機関が自らの診療に使うなら、第三者提供として同意を得る構成が分かりやすいことが多いと考えられます。共同利用にするなら、項目・利用者の範囲・目的・管理責任者を事前に通知又は公表します。どちらにしても、ポリシー・同意書・契約で同じ構成をとります。

学校や園の先生と子どもの情報をやり取りするときの同意は?

保護者の希望と、連携先・目的・方法・やり取りする情報を具体的に示した個別の同意を連携の都度取ります。伝えてほしくない情報だけを書いてもらう形は、何をやり取りするかが分からないため、有効な同意といえるかが問題になりやすく、おすすめできません。

介護施設が入所者の情報をシステムに登録するとき、同意は誰が取りますか?

事業者がその情報を自ら取得して使うなら、施設が入所者から事業者による取得・利用について同意を取ることを契約で定めます。事業者が施設の委託を受けて扱うだけなら委託として整理します。どちらの構成をとるかで、施設との契約で定めるべき義務も変わります。

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